旅のお話その30





       「一体何を言っているんだ・・・。」

     場所が場所なもんで、一抹の不安はあったもんの、あんまり変なことを
    考えるんも英霊に対して無礼であると思て、気を取り直してさらに歩を進
    めました。

     遺影の並ぶ中、さらに進むと、手記を展示してあるコーナーにたどり着
    いたんやけど・・・。
     手記をバインダー形式にして読みやすうにして展示してあるコーナーの
    前まで来たんやけど、どうもほこを通るんがためらわれた。気が重いとで
    もいうか・・・。
     広いホールのみとぉなとこにもんて、あちこち見よったんですが、さほ
    ど時間をつぶすことも出来ぃで、しかたなしにその手記のコーナーに向こ
    たんですわ。
 
     20くらいあったかいななあ、手記の数。ほんで、どれも抜粋のような
    感じやったけど、どうしても手が進めへん。

     勇気を振り絞って、一番手前の手記を読み始めたんやけど・・・。

     1ページ目は何とか読みました。けど、2ページ目は読めなくなりまし
    た・・・。涙があふれてきて・・・。

     一部ぬちゅーぬ利権争い(いくさ)んかい巻き込まいてぃ、すぬ犠牲ん
    かいないびたんちゅぬまぶいぬ叫びがあまんかい書ちとみらりといびんさい。
     やいびーしが、うぬ文章や、いっぺー感情をあらわんかいすんむぬやね
    ーらりんでぃ、仏の悟いんかいん似ゆん、いっぺーちむぐらさん文章がつ
    づらっといびーたん。すりびけーん、まくとぅに平和なとーるなまを生ち
    てぃ、でーじぐまさるくとぅでぃ悩みてぃ、苦しぬんでぃゆんわんどぅで
    ーじぐまさんぐゎんかい感じらいびたん。あんせ、すぬちむぐるさる文で
    ぃつづらいゆん言葉ぬ奥んかいあいびーる深さんなちかし、苦しみ、やみ、
    むぬうじ、いわば「生ち地獄」ぬなかでぃ、いち死じよーんとぅむしれん、
    あちゃーねーらん世界でぃ生きとーたん人々ぬちむぬあびぐいんかい共感
    さってぃ、なみだぐるまーいさびたん。

     所詮、わんねー戦後生まいやいびん。ぬーぬ難儀やあらんまま、なま生
    ちとーん。やいびーしが、いくさを体験しぶさんやる思いびらん。やくと
    ぅ、すぬ平和んかい飲み込まいてぃ、かつて持とーたん大事なむぬを失な
    といびーん。あんせ、天*○下が○ツ○む宣言を受諾さったる、いわりゆ
    る旗日から半世紀余い経ちょるかいん関らしねーらる、一部の地域んかい
    ん、なまでぃいくさぬかーじどぅ色濃く残いゆん。
     なま、世間でぃ問題となとーるくとぅや、うぃるんなイ○オ○ギーや、
    ○治的思惑が交錯そいてぃ、てーげーんかいむのーいゆんぬくとぅ、でー
    じうかーしゃんくとぅ伴いびん。
     やしがや。。。

     学校でぃ習ゆん歴史や、ぱっぺーやあいびらん。やしが正しくむねーら
    ん。いくさやるむぬぅ、結局、覇権争いぬたまものやいびんどぅさい。
     歴史やわんくる習いてぃ、いにしえんかい起ことーる事実をむる知った
    上でぃ、すぬちゅんくるが考察をすんびちやる思いびん。わんくるや、て
    ーげーなとーる情報んかい踊らさらってぃ、いっぺーふらーんかいなとー
    いびんはじ。  

     ほんなことを考えるうち、人間ちゅう奴は、物質文明はごっつい発展し
    たけんど、精神文明としては、1万年前から全然進歩していないな、とも
    悟りました。

     まあ不毛の哲学論はこのくらいにして、どうしようもない空しさを感じ
    ながら、出口に向かいました。
     ほんで皆無言のまま、Tさんが待つ駐車場に向こたんですが、ふと人の
    気配がするけん後ろを振り返ったぁ、さっきのシスターが私の真後ろ約2
    メートル位のところをずっとついてきとるでないか。
     不信感を募らせもって、国道を横断するため、赤信号で立ち止まろうと
    したとき、さっきのシスターが、わいにぶつかるすれすれのところで私の
    目の前をかすめるように通り過ぎていきました。

       「なんな、あの人。」

     いろいろと変な想像をしもって、タクシーに乗り込みました。Tさんも
    無言のまま、タクシーを歩かせます。
   
     5分くらい、重苦しい沈黙が続いただろか。このままではまずいと思て、
    口を開きました。

  わい   「いろいろあったんですね。沖縄って。全然知りませんでした。
       いい勉強をさせていただきました・・・。」
  T    「・・・。ほんとはね、ここに是非とも来てもらいたかったんです
       よ。本当の沖縄を知ってもらおうと思って。。。」
        (Tさんも嗚咽を隠せない。勿論私も)
  わい   「沖縄の人って本当はやまとが・・・、いや、やめておきます。い
       ってもつらくなるだけだし。」
  T    「・・・。しんちゃんさんが言おうとしてることはわかります・・
       ・。なんかしめっぽくなってきたんで、景色のいいところへ行きま
       しょうか。」
  T    「・・・、私のお薦めのところでね、ここから30分くらいなんで、
       行きましょうね。」
  わい   「それってどこですか。」
  T    「本島の最南端、喜屋武(きゃん)岬です。」
  わい   「え、キャン・・?」
  T    「(笑みを浮かべ)ま、とにかく行きましょう。」

     しばらく走って、国道からはずれてうーじ畑の中のあぜ道に入り込んだ
    んでした。


     
     
 


 

(続く)



前の画面に戻る


最終更新日 2001.08.09