各都道府県の慰霊塔が続く中、徳島の塔を見つけました。
墓前で合掌し、塔の周囲を見ますと、徳島の５０市町村の名が、青石に刻まれて
います。もちろん、塔本体も、大きな青石でした。
「やっぱり、遠く離れた場所で、聞き慣れた地名を見ると、感慨深いものがあるね。
この青石って、徳島から運んできたんだろうか。たぶん船だろうけど。そういえ
ば、沖縄って、徳島から１０００キロメートルぐらい離れてるんだよな。」
等と話をしながら歩いていくと、丘を一番上まで上がった見晴らしのいいところ、
先ほど話に出ていた黎明の塔にたどり着きました。
「ここでも、当時の軍の司令官が、集団自決しています。じゃ、もどりましょ
うね。」
「そうですね。歩くとは言ったものの、やっぱり熱いね。日陰でいると、ホント
涼しいですよ。気温は確か３２度前後でしょ。やっぱり太陽光線なんですよね。
この暑さは。」
「ははは、まあそういうことになりますね。大丈夫ですか。熱中症になってま
せんか。」
「ええ、なんとか大丈夫です。ですが、少し休んでいきましょう。Ｔさんは、
暑さには慣れていると思うんですけど、沖縄の人でも熱中症になりますかね。」
「そうですね。多少はなりにくいとは思うんだけど、配達とかしてる人は良く
なるって言う話を聞きますね。炎天下で無理をすると確実になりますよ。熱中
症。」
「はぁ、やっぱりそうなんですね。いやね、昼間のちょうど今頃、だいたい正
午から２時、３時にかけてですか、木陰で車を止めて、何にもしないでじーっ
としている人を何人も見たんですよ。あれは、やっぱり、熱中症にならないた
めにやすんでいるんでしょうね。」
「ああ、そうですよ。だいたいそうですね。だから、帽子も必需品なんですよ。
本土から来た人は、日差しの強さがわからないから、たいてい無理するんです
よ。海水浴もそうかな、たいてい昼間に泳いでいるのは本土から来た人ですね。
それで、ひどい日焼けで、っていうかもうほとんどやけどに近いんですけど、
毎年何十人も病院に運び込まれてます。そんなわけで、地元の人間は海水浴な
んかあまりしないし、泳いでも、朝のうちか、日が暮れてからですね。はい。」
「ふふふ、泳がないで、ビーチパーりーでしょ？」
「え、ビーチぱーりー？ あはは、よく知ってますね。夕方になって気の合う
者同士が寄ってバーベキューをよくやります。だいぶ沖縄のことを勉強してま
すね。」
一息ついたところで、ふたたび駐車場の戻ることにしました。途中、売店に寄
りました。とにかく熱いんで、買う物は決まってます。ポカリスエット、アクエ
リアス。健康飲料になってしまいます。この熱さでは、コーラやそのほかのジュ
ースのたぐいは、甘さが口の中に残って、よけいにのどが渇きそうで、飲む気に
はなりませんでした。乾いた砂にまいた水のごとく、一気に吸い込まれていきま
す。
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