旅のお話その20





   わい 「それで、さっきの話に戻るんですけど。」
   T  「え、なんでしたっけ。」
   わい 「いや、方言の話です。仕事柄、いろんなお客さんを乗せると思うんですけ
      ど、皆が皆標準語でしゃべるとは限らないと思うんですけど、方言でしゃべ
      り倒す、そういう人っていますかねぇ。」
   T  「そうですねぇ。そりゃ、それぞれの地方の人がしゃべる言葉の言葉の節々
      に訛っていうのを感じることはありますけど、みんなそんなにかわんないで
      すよ。それから、一口に沖縄って言ってもね、いろんな島がたくさんあるん
      だけど、その島々に方言があって、方言同士ではあんまり通じないですよ。
       お互いに。」
   わい 「はぁ、そうなんですか・・・。」
   T  「でもね、あれは東北の人だったかな。標準語で言ってるんだけどね。さす
      がにあれはわからなかったなぁ。半分ぐらいしか。申し訳ないんだけども訛
      がきつくてね。(^^;」
      わい 「阿波弁はどうですかね。って聞いたことが無いですよね。ちょっととゃべ
      ってみましょうか。」
   T  「阿波弁って、関西弁に近い感じですかね。」
   わい 「ええ、ほうなんですわ。っちゅうか、意識してしゃべったぁ、なんやごっ
      つい違和感があんなあ。まぁ、いましゃべいよんがぁ阿波弁なんやけどね、
      ははは、大阪弁といっちょもかわれへんでぇな。これが大阪弁になったらや
      ね、あんさん、なにゆうてんねん、変な言葉しゃべらんといてんか、てな感
      じになんねやけどね。」
   T  「ああ、久しぶりに聞きました。うん、だいたいわかりますよ。」
   わい 「やっぱり標準語に戻しますね。なんだか話がしにくいから。」
   
    車内では、とにかくわいとTさんとのやりとりがずーっと続いたんじゃ。タクシ
   ーにはあと二人乗っとうはずやのに、二名はわったー話んかい聞き入っちょーいび
   ーん。

   わい 「すると、やっぱり、それぞれ島の人同士の意志の疎通ができないことと、
      戦中戦後の教育なんかが関係してるんですかねぇ。沖縄の人が、表だって方
      言をしゃべらないのは・・・。方言札とか、過去にいろいろあったから。」
   T  「それは確かにあります。特に最近の若い人は、方言でしゃべれないんじゃ
      ないかなぁ。実際、私も家では方言でしゃべっても、外ではしゃべらないで
      すね。」
   わい 「そうですか。でもなんだかもったいないですね。それが沖縄の文化なのに。
      私は、もっともっと方言でしゃべってほしいと思いますよ。たとえ、言葉が
      わからなくても、観光客にすれば、ああ、ずいぶん遠くへ来たんだなってい
      うかある種の感動がありますから。そんな期待を持って私は来たんですけど、
      帰ってきた言葉が標準語だったんで、なんだかさびしかったですよ。」
   T  「しんちゃんさんは、言葉が気になるみたいですね。実は、さっき心に思っ
      たことがあったんですけど、怒らないで聞いてくださいね。さっき、はいさ
      いって言ったでしょ。実はね、この商売長くやってるけど、観光で来た本土
      の人に沖縄の方言で挨拶されたの始めてなんですよ。変な観光客だなぁ、い
      ったいこの人はどこの人なんだろう。本土から来てるはずなのに、方言を知
      ってるなんて、ね。」
   わい 「あはは、そうなんですか。いやぁ、これは光栄だな。ほんとですかね、っ
      て嘘ついても仕方ないですよね。僕が初めてですか。じゃ、はいさいって言
      ったとき、Tさん、一瞬絶句したけど、あれは、今言ったことを考えてい
      た時間・・・。」
   T  「へへへ、その通りですよ。けどやっぱりうれしいもんですよ。いいねえ、
      方言。でもね、最近、その方言に変化があってね。だんだん崩れてきている
      んですよ。」
   わい 「崩れる?」
   T  「ええ、崩れてきてるんです。自分が昔しゃべってた言葉とも少し違ってき
      ているし、年寄りがしゃべっているのと、自分と同じ年代の者がしゃべって
      いる言葉、それと、っと若い世代がしゃべっている言葉。みんなちがいます。」
   わい 「いや、けどそれは沖縄に限ったことではないと思うんだけど。徳島だって
      同じですよ。どういう風に崩れてきているんですか。」
   T  「なんて言えばいいんだろ。うまく説明できないけど、要するに、方言と標
      準語が入り交じったような感じかな。昔はそんなんじゃなかったんだけど。」
   わい 「ああ、なるほどね。いや、崩れるって言うから、どうなってるんだろうっ
      て、びっくりしました。けど、多かれ少なかれ、仕方のないことですよね。
      言葉は生きてるし。阿波弁も、標準語の語幹に語尾が方言でっていう感じで
      すかね。
       そう言われると、阿波弁も、昔はどんな感じだったんだろうか。そんなこ
      と考えたこと無かったな。」
   T  「あ、もうすぐ玉泉洞に着きますよ。入場料が○○円ぐらいでますから。
       私は、車で待っていますから、どうぞ楽しんでいってください。それと、
      ここの見所は、鍾乳洞ですね。それと、ハブの資料館があります。これは絶
      対みてくださいね。ここは、私も入れますんで、案内しましょうね。全部み
      ようとすればみれるんだけど、よく聞くのが、いったい何を見てきたのか憶
      えていない、っていうことなんですよ。やっぱり、来た限りには、なにか思
      い出として記憶に残してほしいから・・・。
       だから、ある程度絞った方がいいですよ。
        あと、植物園のパイナップルと、エイサーとかもでー・・、いや、とて  ← 「でーじ」と言いかけて、いいなお
      も上等ですよ。ああ、食事はどうしますか。ここでも食べ切れるんだけど、       っしょった。やっぱり言葉では言い
      すこし料金が高いんですよ。もしよろしければ、私が安くていいところ知っ    表せれんなんぞがあるようです。
      ているんで、後で案内しましょうね。あっ、忘れてた。中でジュースも売っ     ほなけんどここでは突っ込まんよ
      てるんだけど、ぜひ、飲んでみてくださいね。マンゴーとか、パイナップル    うにするわな。
      とか、○○円くらい出ると思うけど、とってもおいしいですから。じゃあ、
      行きましょうね。」

    わいやは、Tさんに案内されて、玉泉洞王国村の入場口に向こうていきました。
      

(続く)



前の画面に戻る


最終更新日 2001.1.7