私 「それで、さっきの話に戻るんですけど。」
T 「え、なんでしたっけ。」
私 「いや、方言の話です。仕事柄、いろんなお客さんを乗せると思うんですけ
ど、皆が皆標準語でしゃべるとは限らないと思うんですけど、方言でしゃべ
り倒す、そういう人っていますかねぇ。」
T 「そうですねぇ。そりゃ、それぞれの地方の人がしゃべる言葉の言葉の節々
に訛っていうのを感じることはありますけど、みんなそんなにかわんないで
すよ。それから、一口に沖縄って言ってもね、いろんな島がたくさんあるん
だけど、その島々に方言があって、方言同士ではあんまり通じないですよ。
お互いに。」
私 「はぁ、そうなんですか・・・。」
T 「でもね、あれは東北の人だったかな。標準語で言ってるんだけどね。さす
がにあれはわからなかったなぁ。半分ぐらいしか。申し訳ないんだけども訛
がきつくてね。(^^;」
私 「阿波弁はどうですかね。って聞いたことが無いですよね。ちょっととゃべ
ってみましょうか。」
T 「阿波弁って、関西弁に近い感じですかね。」
私 「ええ、ほうなんですわ。っちゅうか、意識してしゃべったぁ、なんやごっ
つい違和感があんなあ。まぁ、いましゃべいよんがぁ阿波弁なんやけどね、
ははは、大阪弁といっちょもかわれへんでぇな。これが大阪弁になったらや
ね、あんさん、なにゆうてんねん、変な言葉しゃべらんといてんか、てな感
じになんねやけどね。」
T 「ああ、久しぶりに聞きました。うん、だいたいわかりますよ。」
私 「やっぱり標準語に戻しますね。なんだか話がしにくいから。」
車内では、とにかく私とTさんとのやりとりが延々と続きました。タクシーに
はあと二人乗っているはずなのに、二名はわったー話んかい聞き入っちょーいびーん。
私 「すると、やっぱり、それぞれ島の人同士の意志の疎通ができないことと、
戦中戦後の教育なんかが関係してるんですかねぇ。沖縄の人が、表だって方
言をしゃべらないのは・・・。方言札とか、過去にいろいろあったから。」
T 「それは確かにあります。特に最近の若い人は、方言でしゃべれないんじゃ
ないかなぁ。実際、私も家では方言でしゃべっても、外ではしゃべらないで
すね。」
私 「そうですか。でもなんだかもったいないですね。それが沖縄の文化なのに。
私は、もっともっと方言でしゃべってほしいと思いますよ。たとえ、言葉が
わからなくても、観光客にすれば、ああ、ずいぶん遠くへ来たんだなってい
うかある種の感動がありますから。そんな期待を持って私は来たんですけど、
帰ってきた言葉が標準語だったんで、なんだかさびしかったですよ。」
T 「しんちゃんさんは、言葉が気になるみたいですね。実は、さっき心に思っ
たことがあったんですけど、怒らないで聞いてくださいね。さっき、はいさ
いって言ったでしょ。実はね、この商売長くやってるけど、観光で来た本土
の人に沖縄の方言で挨拶されたの始めてなんですよ。変な観光客だなぁ、い
ったいこの人はどこの人なんだろう。本土から来てるはずなのに、方言を知
ってるなんて、ね。」
私 「あはは、そうなんですか。いやぁ、これは光栄だな。ほんとですかね、っ
て嘘ついても仕方ないですよね。僕が初めてですか。じゃ、はいさいって言
ったとき、Tさん、一瞬絶句したけど、あれは、今言ったことを考えてい
た時間・・・。」
T 「へへへ、その通りですよ。けどやっぱりうれしいもんですよ。いいねえ、
方言。でもね、最近、その方言に変化があってね。だんだん崩れてきている
んですよ。」
私 「崩れる?」
T 「ええ、崩れてきてるんです。自分が昔しゃべってた言葉とも少し違ってき
ているし、年寄りがしゃべっているのと、自分と同じ年代の者がしゃべって
いる言葉、それと、っと若い世代がしゃべっている言葉。みんなちがいます。」
私 「いや、けどそれは沖縄に限ったことではないと思うんだけど。徳島だって
同じですよ。どういう風に崩れてきているんですか。」
T 「なんて言えばいいんだろ。うまく説明できないけど、要するに、方言と標
準語が入り交じったような感じかな。昔はそんなんじゃなかったんだけど。」
私 「ああ、なるほどね。いや、崩れるって言うから、どうなってるんだろうっ
て、びっくりしました。けど、多かれ少なかれ、仕方のないことですよね。
言葉は生きてるし。阿波弁も、標準語の語幹に語尾が方言でっていう感じで
すかね。
そう言われると、阿波弁も、昔はどんな感じだったんだろうか。そんなこ
と考えたこと無かったな。」
T 「あ、もうすぐ玉泉洞に着きますよ。入場料が○○円ぐらいでますから。
私は、車で待っていますから、どうぞ楽しんでいってください。それと、
ここの見所は、鍾乳洞ですね。それと、ハブの資料館があります。これは絶
対みてくださいね。ここは、私も入れますんで、案内しましょうね。全部み
ようとすればみれるんだけど、よく聞くのが、いったい何を見てきたのか憶
えていない、っていうことなんですよ。やっぱり、来た限りには、なにか思
い出として記憶に残してほしいから・・・。
だから、ある程度絞った方がいいですよ。
あと、植物園のパイナップルと、エイサーとかもでー・・、いや、とて ← 「でーじ」と言いかけて、いいなおしました。
も上等ですよ。ああ、食事はどうしますか。ここでも食べ切れるんだけど、 やはり、言葉では言い表せられない何かがあ
すこし料金が高いんですよ。もしよろしければ、私が安くていいところ知っ るようです。しかし、ここでは言及しないこ
ているんで、後で案内しましょうね。あっ、忘れてた。中でジュースも売っ とにしましょう。
てるんだけど、ぜひ、飲んでみてくださいね。マンゴーとか、パイナップル
とか、○○円くらい出ると思うけど、とってもおいしいですから。じゃあ、
行きましょうね。」
私たちは、Tさんに案内されて、玉泉洞王国村の入場口に向かったのでした。
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