私 「あと、独特の言い回しってありますよね。たとえば、車を歩かせると
か。服をつけるとか。」
T 「え、本土の人はなんていってるのかな。」
私 「車は走るもので、服は着るっていいます。」
T 「ああ、なるほど! そうですね。確かに言ってますね。言われてみる
と。確かにそういうのはあるね。自分は何にも思わないけど、本土から
来た人は違和感があるのかな。時々聞き返されるときはありますよ。」
私 「そうでしょうね。実は、インターネットで沖縄のことをちょっと調
べたんですけど、やっぱり言葉が重要ですよね。」
T 「ああ、そうだ。今度沖縄にくる予定ってあるのかな。もし、機会が
あったら、タクシーに乗ったときに、りっかりっかいっちょーれー、
って言ったらたぶんびっくりすると思いますよ。」
私 「え? りっ・・・。なんですか。もう一度教えてください。」
T 「りっかりっかいっちょーれー。」
私 「りっかりっか? どういう意味ですか?」
T 「えーとね、早く行ってくれって意味ですね。りっかりっかいっちょ
ーれ、りっかりっか、はっしはっし、てね。この人沖縄の人かなって、
絶対勘違いしますよ。アハハ!」
私 「へえー、なるほど。勉強になりました。機会があったら使ってみま
す。」
T 「あっそうだ。こっちへくるとね、珍しいものがあるんですよ。って
まあ、私には珍しくはないんですが、あの、マンゴーって果物があり
ますね。あれってどういう風に成ってるか知ってますか。」
私 「えーと、あれは南の方でしか採れない果物ですよね。キウイみたい
な感じですかね。」
T 「えっ、・・・。キウイ? キウイってなんですか。」
私 「は? だからキウイフルーツですよ。」
T 「・・・・・。メロンみたいなかんじですかね。」
私 「ええっ。知らないんですか。卵ぐらいの大きさで、灰色っぽくて周
りに毛が生えてるやつですよ。」
T 「みればわかるんだろうけど・・・。ま、とにかくマンゴーを栽培し
ている農家が道ばたにあって、よく見えますから、是非とも写真にと
ってくださいね。他の観光客によく聞かれるんですよ。マンゴーの食
べ方とか食べ頃って知ってます?」
私 「いや、知らないです。」
T 「店で売ってるのは、すこし若くて堅いんです。だから、しばらく冷
蔵庫の中に入れておいて、時々指で押さえてね、柔らかくなってきた
ら、頃合いを見計らって、食べるんですよ。」
私 「ふーん」
しばらく走ると、のどかな田園地帯にさしかかりました。Tさんが車を止めます。
T 「えーと、これがマンゴー畑ですけど。車止めましょうね。たぶんみた
ことないと思うんで、是非写真にとって、土産話にしてほしいんですけ
どね。」
私 「ふーん、紙袋でおおいをかけているんですね。あれは、やっぱりセミ
よけですね。」
T 「ええそうですよ。よく知ってますね。あれしないとね、セミが汁を吸
って、その傷口から腐ってきて商品価値がなくなるんですよ。周囲に網
でおおいをしてるでしょ。全部虫除けですよ。」
私 「ふーん、まるで梨畑みたいですねぇ。」
T 「梨? 梨って、果物の梨ですか? 梨はみたことないんです。」
私 「リンゴみたいなかっこうで、色が、灰色というか茶色っぽいんです。み
た感じはリンゴと一緒ですよ。」
T 「へえ、そうですか。リンゴは高級品ですよ、沖縄じゃあ。」
私 「高級品? ああ、ひょっとして、沖縄じゃあ気温が高すぎて育たない?」
T 「そうなんです。徳島ではどうですか。」
私 「うーん、昔はバナナとかも一緒で、ものすごく値段が高かったけど、
今は違うね。そんなに高くないなあ。」
T 「バナナが? 高かったの?」
私 「そう、私がまだ小さかった頃はね。値段が高かったから、病気したと
きとか、遠足の時でなかったら食べられなかったなぁ。」
T 「なんだかよくわからないけど・・・。」
私 「そうだ。似たような話でね、徳島では温州みかんは掃いて捨てるほど
あるんだけど、私の友達が冬に北海道旅行したときにね、その温州みか
んをたくさん持っていってね、バスガイドのおねーさんに、なにげなく、
「これあげる」って言ってみかんをさしだしたんだけど、そのバスガイ
ドがね、なんて言ったと思います?」
T 「うん・・・なにみかんですか。」
私 「温州みかんですよ。沖縄でいう、たんかんみたいなものかな。ミカン
の一種です。」
T 「そうですか。なんて言ったのかなぁ。いゃあ、想像がつかない。」
私 「そんな高級品、いただけません。って言ったらしいんですよ。で、言
われたこっちも逆にびっくりしてね。なにいってんの、徳島じゃ腐るほ
どあるから気にしないでくれ、って言って、無理矢理手渡したらしいん
ですよ。」
T 「なるほどね、地方地方でとれるものが違うから・・・。」
私 「全くその通りですよ。そのバスガイドは東北の出身で、東北では柑橘
類は育たないらしいんですよ。」
T 「で、梨ってどういう風になってるんですか。」
私 「このマンゴーみたいな感じです。ブドウも一緒ですよ。梨もセミによ
くやられるんで、袋をかぶせて、周囲を網で囲っています。」
T 「そうですか。こりゃ久しぶりに楽しいな。じゃ、玉泉洞行きましょう
ね。」
とにかく、車の中では、私とTさんとの言葉のキャッチボールが延々と続
きました。
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