旅のお話その18





    Tさん、苦笑いしたまま、中城から車を走らせます。しかも無言。
    何か粗相があったのかと心配になり、Tさんに尋ねました。 

    私  「どうかしたんですか。」
    T 「え、いやべつになにもありませんけど・・・。あぁ、実は先頭に
       止まっていたから順番でお客さんが話しかけてくるでしょ。断るの
       が一苦労でね、はやくあそこから出たかったんですよ。」

     なんだ、そうなのか。なんてことはない、単なる私の取り越し苦労
    でした。

    T 「で、今日は半日貸し切りってことですけど、どこ行きますか。玉
       泉洞とか行きました? 名護の方もいいんだけどね。喜屋武岬も上
              等ですよ。だいたい決めてきましたか?」

     でました。いつものT節です。(^^)

    私  「えーと、いろいろ話はしたんですけど、結局私らは、沖縄のこと
       をちっとも知らないんです。でも、半日で沖縄本島全部を周遊する
       のは無理でしょ? だから、とりあえず南半分を回ってもらって、
       めぼしいところはTさんに選んでもらおうと思ってるんですよ。」
    T 「ああー、そうですか。いやこまったな。いいところはいっぱいあ
       るんですよ。じゃ、南の方行きましょうね。とりあえずパンフレッ
       トがあるから、これみてください。じゃ、とりあえず、南の方が観
       光名所が多いんで、そっちの方に向いて走りますから、適当に決め
       て下さいね。でも、是非みてほしいところもあるんだけどね、平和
       記念公園とか、ひめゆりの塔とか、摩文仁の丘とか、海軍壕とかほ
       んと上等ですよ。決まったら言ってください。」

     はっきり言って困りました。パンフレットには、10カ所くらい観光名
    所がかかれています。しかし、結局、島の南半分といえども、表示のある
    観光名所を全部回るのは無理と言うことで、とりあえず、一番メジャーな
    玉泉洞に行くことになりました。

     行くと言っても、車で30分くらいかかるということなので、しばし私
    とTさんのトークタイムです。

     さて、ここは、Tさんにうちなーんちゅ代表として答えてもらうぞ。

    私  「いきなりこんな話をして気を悪くしないでほしいんですけど・・・。
        Tさんって、当然沖縄の人ですよね。標準語が上手ですね。や
       っぱり、観光客相手の仕事をしてるからなんですかね。」
    T 「はい、生まれも育ちも沖縄ですよ。え、そうですかね。多少なま
       ってるとは思いますけど。ああ、実はね、学生の頃に、関西で生活
       してたことがあってね、その影響かな。でも、もうずいぶん前なん
       だけど。」
    私  「ああ、そうですか。いや、沖縄って、独特の方言って言うか、言
              葉がありますよね。先日、国際通り行きましてね。そのときあちこ
              ち歩いたんですけど。」
    T 「ああ、私がこの前乗せていった時ね。で、どうでした。よかった
       でしょ。」
    私  「ええ、よかったですよ。で、あのあと、平和通りとか、市場通り
       を歩いたんですけどね。気になったことがあったんですよ。」
    T 「へぇ、そこまでいったの。公設市場は行ったんですか。で、何か
       ありましたか。」
    私  「いやね、公設市場までは行かなかったんだけど、ただ・・・、方
       言でしゃべってなかったんですよ。」
    T 「そんなことないでしょ。みんなしゃべってると思うけど。」
    私  「いや、それがね、地元の人同士だと当然方言でしゃべるじゃない
       ですか。実際、そういうのをみたんですけど、市場通りで。でも、私
       がその人らに近づいていくと急に標準語に言葉が変わってねぇ。び
       っくりしたんですよ。」
    T 「それは、観光客ってわかったからじゃないですか。」
    私  「と思ったんですけどね。そこにいたお客さんまで標準語になってた
       んですよ。」
    T 「・・・・。そうかなあ。あんまりそういうのを意識してないからな
       あ。」
    私  「さっき、Tさんに挨拶したとき、うちなーぐち使ったの、わかり
       ました?」
    T 「そりゃわかりますよ。地元の言葉だから。けど、どこで勉強したん
       ですか。」
    私  「市場通りで、その言葉の変化が3回くらいあってね、それで不思議
       に思ってね。気になって、国際通りのとある本屋さんで、うちなーぐ
       ちの本を買って覚えたんです。」
    T 「で、方言で、うちなーぐちで話しました?」
    私  「いや、ちょっと本を読んだぐらいではむりですけど、でも、挨拶は
       覚えましたよ。たとえば〜、はいさい、ちゅーがなびら、ちゃーびら
       さい、とか、にふぇーでーびるとか、ぐぶりーさびらとかね。」 
    T 「へえ、すごいね。それだけ知ってれば、挨拶は十分ですよ。」
    私  「それで、本を買って、県庁のところに公園みたいなところがあって
       ね、そこで本を読んで、とりあえずさっき言った言葉を覚えて、帰り
       のタクシーで、料金の支払いの時に、にふぇーでーびる、あんせ、ぐ
       ぶりさびらって言ったんです。」
    T 「ふんふん、それで。」
    私  「運転手さん、なんかものすごくうれしそうな顔になってね・・・。
        やっぱり、方言で話してくれた方がうれしいですかね。」
    T 「そりゃうれしいですよ。けど、本土から来た人で、方言で話す人な
       んて、そんな人はほとんどいないなぁ。ああ昔いたなあ、いや・・・。
        あれは地元の人だから、・・やっぱりいないね。しんちゃんさんが
       初めてですよ。」
    私  「へえ、そうですか。なんか不思議な気もするけど。」

    観光客から方言で話しかけられたことがないというTさんの発言はにわか
   に信じがたいものでした。
        

(続く)



前の画面に戻る


最終更新日 2001.1.7