旅のお話その17





    仕事を終え、再び宿舎に帰ってきました。

    熱い、とにかく熱い。遊びでならともかく、地元の者でもおそれる太陽雨の
   降る街での仕事はつらいです。

    なかなか水平線に落ちない、白く光る太陽を眺めながら、自分の部屋へ入り
   ます。そうするうちに、日程変更の連絡が入ったのでした。

    なんでも、当初予定されていた行事がキャンセルされて、それに伴い、我々
   の仕事も一部なくなってしまったとのこと。
    はぁ〜、では、休みの日は丸一日宿舎で缶詰かぁ〜、等と思っていると、外
   出OKだとのこと。

    いやぁ、ラッキーでした。

    前日思いついたことを実行できる、そう思ったのでした。
    さっそく同僚と外出計画を練り始めます。

    数日前に、たまたま乗ったタクシーの運転手さん(Tさん)から名刺をも
   らっていたのを思い出し、その話を持ち出したのです。もちろんみんな話に乗
   ってきました。
    格安の値段で、半日観光地巡りをしてくれるという話を聞いていたので、早
   速電話をかけてみたんです。
    心配だったのは、Tさんに他の予定が入っていて、断られないかというこ
   とだったんです。でも、そんな心配は無用でした。なにも予定はないというこ
   とで、さっそく一日貸し切りの予約を入れたのはいうまでもありません。あさ
   っての午前10時ごろに、宿舎まで来てね、と。

    で、当日の朝、午前8時過ぎ。二度アポの電話をかけます。
    実は、インターネットで調べるうち、うちなーんちゅは時間にルーズだから、
   二度アポをしないとすんなりいかないよ、という話を見つけていたこと、また、
   以前に沖縄旅行をしたことがある者も、似たようなことを言っていたのです。
   (だぁー、うちなーじまぬぐすうよ、ぐぶりーさびぃぃん!)

    まあ、念押しの電話ですから、それとなく柔らかく押さえておいて、時間を
   待ちます。

    そして、待ちに待った、小旅行の時間です。宿舎の外に出ると、またいつも
   のようにタクシーが長蛇の列。
    その先頭に、見覚えのあるタクシーが止まっていました。Tさん、同業者
   と談笑中。近づいてきた私たちに気づき、こちらへ歩いてきます。
    私は、満身の笑みを浮かべて、

    「はいさい、Tさんですか。おとつい電話したしんちゃんです。今日一日
   よろしくお願いします。」

    ところが、Tさん、なぜか5、6秒当惑したような表情で、絶句した後黙
   り込み、苦笑いしながら、

    「・・・・・・・・・・・・・・は?。・・いえ、こちらこそ。えーと、3
   人ですね。とりあえず乗ってください。」

   と、なんだか無愛想。

    「あれ、まずい。Tさん、なんか機嫌がわるそうだな、大丈夫かなぁ。」

   一抹の不安を抱きながら、タクシーは発進したのでした。

(続く)



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最終更新日 2001.1.7