旅の話その12




    スクランブル交差点を斜めに横切って、ふらふら歩いていったぁ、前方に木陰があ
   ります。ほんで陰の下にベンチがありました。もう先客がおったけんど(50歳くら
   いのおっさん)。
    なんでかわいに軽く会釈をしてくれました。わいも無意識に会釈をしたんやけんど。
   (熱でやられそうになっとんは明白やったろうね。おっさんから見て)

    やっとの思いでベンチに座ったんやけんど、汗はいっこうに止まる気配がありまへん。
    おまけに気分悪ぅんなってきた・・・・

     「だぁーっ。すぱ屋ぬおばちゃんむ、タクシーぬ運ちゃんむ、くのくとぅ言と
     ーたんやー。」   
                            
    後の祭りってゆーんはこんことで、今更後悔したってどないもなれへん。頭は重いし・・
   ・どないしょ。

     「あいっ。とにかく水ぐぁ飲めー言とーたね。肝心なくとぅ忘しとーたさ。」

    あたりを見渡します。と、少し離れたところに自動販売機を見つけました。っと、
   ここですぐにジュースを買いに行きたいとこやけんど、日陰の向こうは、灼熱の太陽
   光線が・・・。日なたに出るんに勇気がいるやて思たんはほんまにこんときが初めてで
   した。ほんで、なにげなしに交差点の方に目を向けたぁ、あれ、目が・・・。なんでこ
   なぃまぶしいんな? 

    よおに周り見たぁ、白いコンクリートに、琉球石灰岩のオブジェ、ほん中にあるベンチ。
    ほう、周りの造形が紫外線を跳ね返しとったんでした。ほんまにまぶしい。
    目ぇ細めんと、周りが見えにくい。

    5分くらい、呆然としよりましたが、身体の方が大事やし、こんなとこでひっくり返っ
   て恥をかきたぁない。
    勇気を振り絞って、自販機の方へ歩いていきました。
    天空からは、あいかわらずじりじりと照りつけとります。まさしく熱線のシャワー。
    自販機の所へ来て、とりあえず、スポーツドリンクを飲みました。けんど、350c
   cやて、あっという間に身体に吸い込まれていきます。ほんで、2本目はお茶にしました。

     ↑ 伊藤園のおーいお茶 さんぴん茶むうっちん茶む飲みやびたしが慣れないせいか、
              もうひとつやいびーたん 

    お茶を片手に元のベンチに座ります。ひと口ひと口、身体に染み渡るように、ちび
   ちびお茶を飲んみょったら、目の前をねーねー(ホントはおばちゃん)がちらちら横目
   でこっち見もって歩いていきます。

      「あいっ、でーじあちこーこーやしが、いゃー熱中症やなとーみ。」

    とはゆうてくれへなんだけど、ほう言いたげな顔でした。 
 
    やっぱり人の忠告は聞くもんです。
    沖縄の人がやいよるよおに、自分も同じようにじっとしよったら、どないぞ汗がひきはじ
   めて、身体も楽になってきました。

      「ふぅ、なんとか盛り返したねー。」

    ほう思いながら、さっき買うた本のこと思い出して、紙袋から取り出しました。ほいで、
   本の中に目を通し始めたんです。

   

(続く)



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最終更新日 2000.09.04