スクランブル交差点を斜めに横切り、ふらふらと歩いていくと、前方に木陰があり
ます。そして陰の下にベンチがありました。すでに先客がいましたけど(50歳くら
いのおじさん)。
なぜか私に軽く会釈をしてくれました。私も無意識に会釈をしましたが。
(熱でやられそうになっているのは明白だったろうね。おじさんから見て)
やっとの思いでベンチに座りましたが、汗はいっこうに止まる気配を見せません。
おまけに気分が悪くなってきた・・・・
「だぁーっ。すぱ屋ぬおばぁとぅか、タクシーぬ運ちゃんや、くりんあびとーた
がやー。」
後の祭りとはこのことで、今更後悔したってどうにもなりません。頭は重いし・・
・どうしよう。
「あいっ。とにかく水ぐぁ飲めー言とーたね。肝心なくとぅ忘しとーたさ。」
あたりを見渡します。と、少し離れたところに自動販売機を見つけました。っと、
ここですぐにジュースを買いに行きたいところですが、日陰の向こうは、灼熱の太陽
光線が・・・。日なたに出るのに勇気がいるなんて思ったのは本当にこのときが初め
てでした。そして、なにげなく交差点の方に目を向けると、あれ、目が・・・。なん
でこんなにまぶしいんだ?
よくよく周りを見ると、白いコンクリートに、琉球石灰岩のオブジェ、その中にあ
るベンチ。そう、周りの造形が紫外線を跳ね返していたのでした。本当にまぶしい。
目を細めないと、周りが見えにくい。
5分ほど、呆然としていましたが、身体の方が大事だし、こんなところでひっくり
返って恥をかきたくない。
勇気を振り絞って、自販機の方へ歩いてゆきました。
天空からは、あいかわらずじりじりと照りつけています。まさしく熱線のシャワー。
自販機の所へ来て、とりあえず、スポーツドリンクを飲みました。けど、350c
cなんて、あっという間に身体に吸い込まれてゆきます。そして、2本目はお茶にし
ました。 ← 伊藤園のおーいお茶 さんぴん茶むうっちん茶む飲んだけど慣れ
ないせいか、もうひとつやいびーたん
お茶を片手に元のベンチに座ります。ひと口ひと口、身体に染み渡るように、ちび
ちびお茶を飲んでると、目の前をねーねー(ホントはおばちゃん)がちらちら横目で
こちらを見ながら歩いてゆきます。
「あいっ、でーじあちさんやしが、っいゃー熱中症やあらに。」
とは言ってくれませんでしたが、そう言いたげな顔でした。
やっぱり人の忠告は聞くものです。
沖縄の人がやっているように、自分も同じようにじっとしていると、なんとか汗が
ひきはじめ、身体も楽になってきました。
「ふぅ、なんとか盛り返したねー。」
そう思いながら、先ほど買った本のことを思い出し、紙袋から取り出しました。そ
して、本の中に目を通し始めたのです。
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