50余年前、世界の列強に翻弄されたあの地が、今、目の前にある。美しい景色
とは裏腹に、過去の出来事が脳裏をよぎり、複雑な気持ちになったのでした。
とりあえず、景色を見ながら少し遅めの昼食タイムです。
食べ放題のバイキング料理でしたが、必ずある料理、それは、ちゃんぷるーと沖
縄そばでしょうか。
一通りのものを食べましたが、どうも沖縄そばは、できあがるのを待って食べる
くらいがいいようです。いつでも食べられる状態にしてあるものは、めんがのび気
味だったので・・・。そして、その上に乗せるソーキも、ピンからキリまであるこ
とに気づいたのです。国際通りで食べたソーキがおいしかったな、等と思いながら、
腹ごしらえをしました。
食事を終え、タクシーのところに戻りますと、Tさんすぐに車から降りてきて
私達に言いました。
「景色を見てなかったですね。忘れないうちに見ときましょうね。このレス
トランの横から見えますよ。」
「この景色ですけど、戦争の記録映画とかで見ることが出来るあの風景です
ね。」
「ああ、はいそうですよ。ぜひともこの景色を見てもらおうと思ってね。」
「・・・・きれいだけど、昔のことがなかったらもっといいのにね。」
「・・・。じゃ、行きましょうね。」
ふたたび、タクシーに乗り込み、南へと向かいます。
しばし沈黙が続きました。
「ところで、しんちゃんさん。」
「はい、なんですか。」
「いちゃりばちょーでい、っていう言葉を知っていますか。」
「え、何ですか。もう一度お願いします。」
「いちゃりばちょーでい。」
「うーん、わからない。どういう意味ですか。」
「出会えば兄弟って、意味ですね。沖縄には、出会う人はみんな兄弟で、何
の隔たりもなくもてなしましょうっていうか、そういう格言というか、言葉
があるんです。
きょうは・・・、決めました! 今日は一日、みなさんを自分の兄弟だと
思ってみなさんを案内しようと思います。これだけ沖縄のことを考えてくれ
るんだからね。」
「・・・・・・そうですか?!」(一同しばし沈黙)
(Tさん、唐突に)
「・・・、だからよ〜。」
(後に、インターネットで沖縄関連を検索していて、うちなーんちゅに言わしめた
この一言の重みについて知ることとなる。ただ、その後の「だからよ〜。」につい
ては、何を意味しているのかわからなかった。まあこれも、後にインターネットで、
”詳しいことはわからないけどとにかくそうなんだよ””だからよー。なんでかね
ー。”という、セットになる言葉であることがわかったのです。)
しばらく走ると、白を基調とした大きな建物が見えてきました。
「ここが、平和記念公園です。ここも中に入りましょうね。ここは中をバス
が走ってて、観光客用に、あちこち案内をしてくれます。この時期は外がも
のすごく熱いから、そういうのがあるんだけど、歩いてもそんなに遠い距離
じゃないです。どっちにしますか。」
うーん。これまたはっきり言って悩みました。沖縄の夏の暑さは先日国際通りに
行ったときに、いやというほど満喫したのですが、さて、どうしたものやら。
しかし、バスに乗るということは、細かいところは見ることが出来ない。そして
その距離は、1キロもないということなので、結局歩くことに決めました。
するとTさん、慌てた様子です。
「え、歩くんですか。ま、大丈夫とは思うけど、熱中症が怖いから・・・。
さて、案内するのはいいとして、ちょっと待ってください。こんな事もある
かと思って準備しているものがありますんでちょっと取ってきます。」
Tさん、タクシーに駆け寄って、なにやら取り出している・・・。なんだ、帽
子か・・・。
「今日はね、帽子つけてきました(^^)。あ、いや、かぶってきた、か。(^^;
みなさん帽子持ってますか。沖縄じゃ帽子は必需品ですよ。もしなくても、
途中の売店で売ってますんで大丈夫です。じゃ、行きましょうね。」
Tさんに案内され、灼熱の太陽雨に熱く焼けた、石畳の広い通路を歩き始めま
した。
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