阿波弁のあいさつ





                  さて、阿波弁の挨拶ですが、あまり丁寧とはいえないものが多いようです。
                 列記すると、
            
                 「ありゃあ、えっとぶりじゃなぁ、どないしよんえ。(あれぇ、ひさしぶりですね。どうしているの。)」  
                 「おぅい、どこいっきょんで〜(おーい、どこに行っているんだ。)」            
                 「なんしょんえ。(なにをしているのかね)」                   
                 (いずれも仲間内の挨拶言葉です。目上には余り言いません)
            
                 「これこれ、どこにいきなさいよんかいね。(これこれ、どこにいっていらっしゃいますか)」
                 (これは、おばあさんがよく口にする言葉です。丁寧な言い回しの女性言葉です。)
            
                 「朝のとうからどこいかれよんで。(朝早くからどこに行っているのですか)」
                 (これも丁寧語で、女性言葉です。)  
            
                 「元気にしよりますかぁ。  元気にしよりますで。 (元気にしていますか)」              
            
                 「あれ、どうも、今日はええ天気じゃなぁ。(あれ、どうも、今日はいい天気だなあ)」      
                 「ああ、ほんにええ天気じゃな。ほんでどこにいかれよんで。(はい、本当にいい天気だね。ところで、
                  どこに行っているのですか。)」
                 (余りよく知らないご近所さんとかに話しかけるときは、お天気の話で切り出したりします。)
            
                 「調子よういっきょるで。(調子よくいっていますか − 転じて・・・元気に行っているか)」
                  (この言い方も目上には言いません)
            
                 「おう、なんしょん。(おい、何をしている−相手の行動を聞く時もこの言い方をするが、朝一番に出
                  会って相手からこの言葉が出たとき、私は歩いているとか、○○に行っている、等と言うと、言われ
                 た方は変な顔をする − この場合の返答は、「ああ、おはようさん」、「おはようさんでした」とか、
                 「おぅ、えっとぶりじゃな。おまえこそなんしょんな」、となります。目上には使いません。そして、
                 「ほなけん、なんしょんえ(だから、なにをしているの)」と、改めて同じ事を聞かれたときに初めて、
                 ○○へ行っている等と返答します。もちろん、開口一番で「おはようさんでした」ともいいます。)
            
                 「どないしょん。(どうしているのか−なんしょんと用法はほぼ同じ。ただし、いずれの言葉も目上の
                 人には使ってはいけない。あくまで気心の知れた仲間内で使うこと)」                
             
                   ↑   徳島の民放「四国放送」で、この名前の番組がありました。「パワフル徳島どないしょん」
             
            
                  だいたいにおいて、相手の行き先、健康状態を問うことが、挨拶の言葉となっているようです。
                  ですから、「おはようさんでした」「こんちは」「さいなら」という言い回しもありますが、これは
                 目上の人とか、かなり改まったときに使います。それ以外では、「おはよう」のたぐいは言いませんね。
                                          
                  このへんまでくると、みなさんはもうお気づきですよね。実は、阿波の言葉に、語句としての敬語と
                 いうものはあまりないんです。丁寧な言い回しをするときは、話し方そのものが丁寧になり、語るスピ
                 ードが6、7割程度遅くなります。
                  また、現在の天候や身体の常体の問いかけを挨拶として代用しているような感じでしょうか。
            
                  「こんにちは」「さようなら」
             
                  これは標準的な挨拶ですが、普段の生活ではほとんど使わないんですね。なぜか。
                  もっとも、公式の場では、標準語での会話となりますが、どちらかというと、標準語が上位に位
                 置するような教育を受けてきたせいか、どうも阿波弁はぞんざいな言葉のようなイメージが、私個
                 人にはあります。
            
                  阿波弁には敬語というものがほとんど現存していませんので、(明治以前にはあったのかもしれませんが、
                 当時の標準語励行政策のせいか、ほとんど残っていない。当時徳島にも方言札のようなものがあったことは、
                 私の祖母から聞かされました。)
                  ていねいな言い回しの時には、もっぱら標準語の中の敬語を使用しています。そして、公式の場では、標
                 準語での会話となります。といいながら、語尾、接続詞には方言が入りまくりですが。(徳島も大坂弁の影
                 響は大きいと思います。)
            
            
                  さて、別れの言葉ですが、
            
                  「ほな、いんでくるけんな。(では、帰ってくるよ。)」
            
                  「ほな、いんできますけん。(では、帰ってきますので)」  丁寧
            
                  「ほな、またよろしゅう。(では、またよろしく)」
            
                  「ほな、いぬけん(では、帰るから)」
            
                  「ほな、いんどります。(では、帰っております。)」    丁寧
            
                  「ほな、いぬわな。(では、帰るよ)」
            
            
                   ここで注意してほしいことは、「いんできます(帰ってきます)」と言っても、一旦家に帰って、再び出直
                 してくることではありません。前後関係から、出直してくることを意味するときもありますが、実際にはあま
                 り言いません。
                  その場合、たいていの場合、「(ちょっと)出直してくるけんな。(出直してきます)という言い方をします。
            
                  「ほな」というのは、標準語で言う「それでは」の意味です。
                  「いぬ」と言う言葉が、「帰る」と言う意味で、たぶん「居る」と言う動詞の古語が、今に生き
                 ているのではないかと思います。「居ぬ」「居ん」
                  これからすると、「もうそこにはいませんよ」と言う意味になるのでしょうか。
                  まだありそうですが、思い出したら補完しましょう。



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最終更新日 2001.09.06